追加調査で押さえる実務ポイント
マクロパッドでは、キー入力をUSB HIDとして安定送信できることが最優先です。ESP32-S3はWi-Fi/BluetoothとUSB OTGを組み合わせたい場合、RP2350を搭載するRaspberry Pi Pico 2はUSB HID、PIO、豊富なGPIOを単純な構成で使いたい場合に有力です。最初に「無線が必要か」「USB端子がネイティブUSBへ接続されているか」「使用SDKでHID Deviceが再現できるか」を確認します。
先に結論
| 条件 | 選びやすい候補 | 理由 |
|---|---|---|
| 有線USBマクロパッドを最短で作る | Raspberry Pi Pico 2 / RP2350 | USB DeviceとGPIO中心の構成に集中しやすい |
| Wi-Fi/BLE連携も行う | ESP32-S3 | 2.4GHz Wi-FiとBluetooth LEを内蔵 |
| キーマトリクス以外の独自I/Oを多用 | RP2350 | PIOを利用した独自周辺制御が可能 |
| Web設定、無線OTA、ネットワーク連携 | ESP32-S3 | 無線機能と豊富なソフトウェア資産 |
| 製品化 | どちらも要追加検証 | モジュール認証、電源、USB保護、量産書込みを別途設計 |
MCUとボードを分けて考える
ESP32-S3やRP2350はMCU名です。ESP32-S3-DevKitC-1やRaspberry Pi Pico 2は開発ボード名であり、USBコネクタ、レギュレータ、フラッシュ、LED、ピン配置はボード側の仕様です。同じMCUでも、USB端子がUSB-UART変換器へ接続されているだけのボードでは、期待するネイティブUSB HIDをその端子から出せない場合があります。
| 項目 | ESP32-S3 | RP2350 / Pico 2 |
|---|---|---|
| CPU | Xtensa LX7デュアルコア | Arm Cortex-M33またはHazard3 RISC-Vを選択可能 |
| 無線 | Wi-Fi、Bluetooth LE | RP2350単体は無線なし。Pico 2 Wは別ボードとして確認 |
| USB | USB 2.0 OTG機能 | USB 1.1 controller/PHYを備える |
| 主なSDK | ESP-IDF、Arduino-ESP32 | Pico SDK、MicroPython等 |
| HID実装 | TinyUSB、ESP-IDF/ArduinoのUSB機能 | TinyUSBを含むPico SDK例 |
| GPIO電圧 | 3.3V系。ボード仕様を確認 | 3.3V系。Pico 2資料を確認 |
マクロパッド固有の比較軸
キー数とスキャン方式
数個のキーなら各GPIOへ直接接続できます。キー数が増えると行列スキャンを使います。行列ではゴースト対策のダイオード、内部プルアップ、スキャン周期、デバウンスを設計します。RGB LED、ロータリーエンコーダ、OLEDを追加する場合は、必要GPIO、I2C/SPI、電流を別に見積もります。
USB HID
最初はキーボード1キーだけを送る最小構成にします。複合デバイス、Consumer Control、マウス、MIDIを同時に入れると、Descriptorとレポート形式の切り分けが難しくなります。OS上で認識名、VID/PID、Report Descriptor、押下と解放の双方を確認してください。
消費電力
有線専用ならMCUの低消費電力差より、RGB LEDやディスプレイの方が支配的になることがあります。無線やバッテリーを追加する場合は、平均電流だけでなく送信時ピーク、USB接続中の給電、充電回路、スリープ復帰を測定します。
最小検証手順
- 正確なボード名とリビジョンを記録する。
- データ通信対応USBケーブルで公式Blink例を書き込む。
- 公式またはSDK付属のUSB HID Device例をそのまま動かす。
- PCのデバイス一覧で列挙を確認する。
- GPIO 1本へスイッチを接続し、1キーの押下・解放を送る。
- 連打、長押し、抜き差し、再起動、スリープ復帰を試す。
- その後に行列、LED、OLED、無線を1機能ずつ追加する。
配線と安全
- GPIOへ5Vを直接入力しない。
- USB VBUSと外部電源を同時利用する場合は、逆流経路をボード回路図で確認する。
- 長い配線や静電気が予想される完成品では、USB保護、入力保護、GND設計を追加する。
- キースイッチやエンコーダはチャタリングするため、ソフトウェアまたは回路で対策する。
- 開発ボードの3.3Vピンが供給できる電流を超えてLEDを駆動しない。
選び方
ESP32-S3は、無線設定、Web UI、BLE、OTA更新までマクロパッドへ統合したい場合に向きます。一方で、USB端子構成やSDK設定の確認項目が増えます。Pico 2は、有線HIDを中心に、PIOや多数GPIOを使った入力装置を構築する場合に扱いやすい選択です。性能値だけでなく、使うボードの回路図、SDK例、デバッグ方法、入手性を含めて決めてください。
関連ページ
参考リンク
確認日: 2026-08-02
- https://www.espressif.com/en/products/socs/esp32-s3
- https://docs.espressif.com/projects/esp-idf/en/stable/esp32s3/api-reference/peripherals/usb_device.html
- https://github.com/espressif/esp-idf/tree/master/examples/peripherals/usb/device/tusb_hid
- https://docs.espressif.com/projects/esp-dev-kits/en/latest/esp32s3/esp32-s3-devkitc-1/user_guide_v1.1.html
- https://github.com/espressif/arduino-esp32
- https://datasheets.raspberrypi.com/rp2350/rp2350-datasheet.pdf
- https://www.raspberrypi.com/products/rp2350/
- https://www.raspberrypi.com/documentation/microcontrollers/silicon.html
- https://github.com/hathach/tinyusb
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