基本情報
| テーマ | ABSライクレジンを選ぶ理由 |
|---|---|
| 知りたいこと | 割れにくいレジンや実用品向けレジンを比較したい。 |
| 主な読者 | ミニチュアだけでなく実用品や原型を作る人。 |
| 分類 | レジン |
| 確認項目 | 靭性、硬さ、臭い、洗浄方法 |
| 一次情報の確認先 | 機器・材料メーカーの公式仕様、取扱説明書、更新情報 |
| 情報確認日 | 2026-07-14 |
機種、材料、販売条件で結果は変わります。設定や購入の前に、対象製品の型番と公式情報を確認してください。
概要
ABSライクレジンは標準レジンより粘りや割れにくさを期待して選ばれます。曲げ、靭性、臭い、色を確認します。
主な読者 ミニチュアだけでなく実用品や原型を作る人。
この記事でわかること
- ABSライクレジンとは何か、そして本物のABSプラスチックとの決定的な違い
- 標準レジン、ABSライク、高靭性(タフ)レジンの強度・コスト比較
- ABSライクレジンが最も威力を発揮する用途(可動フィギュア、ケース試作など)
- 使用時に気をつけたい特有のデメリットと安全対策
- 印刷後の適切な洗浄、二次硬化、サポート除去のコツ
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最初の結論
光造形3Dプリンターで印刷した造形物が「サポート材を剥がすときにポキッと折れてしまった」「机の上から落としただけで粉々に砕けてしまった」という経験はありませんか?
結論として、「割れにくく、少しの衝撃やねじりにも耐える造形物」を作りたい場合、第一候補となるのが「ABSライクレジン」です。 一般的な「標準レジン」が硬くて脆い(ガラスに近い)特性を持つのに対し、ABSライクレジンは適度な「粘り(靭性)」を持つようにブレンドされており、落としたり少し曲げたりした程度では割れない耐久性を備えています。
ただし、注意が必要なのは、「ABSライク(ABSのような)」という名前であっても、射出成形などで使われる本物の工業用「ABS樹脂」と全く同じ機械的強度や耐熱性を持っているわけではないという点です。光硬化樹脂としてのアクリル系ベースは変わらないため、用途の限界を正しく理解し、適切な後処理を行うことが大切です。
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レジン性能比較表(標準 vs ABSライク vs 高靭性)
光造形で使われる主なレジンの強度と扱いやすさの比較です。
| 比較項目 | 標準(スタンダード)レジン | ABSライクレジン | 高靭性(タフ)レジン |
|---|---|---|---|
| 引っ張り・曲げ強度 | 低(力をかけると即座に破断する) | 中(しなりがあり、限界値まで耐える) | 高(柔軟性があり、曲げても元に戻る) |
| 耐衝撃性(割れにくさ) | 低(落下の衝撃などで容易に砕ける) | 高(多少の落下や衝突では壊れない) | 極めて高(ダンパーのように衝撃を吸収) |
| 寸法精度・造形性 | 極めて高い(収縮による歪みが少ない) | 高い(エッジもしっかり出る) | やや低い(造形が柔らかいため、歪みやすい) |
| 後処理の難易度 | 簡単(サポートもパキパキ剥がせる) | 普通(サポートが硬いため工夫が必要) | やや面倒(粘りがありカットしにくい) |
| 価格帯 | 安価(3,000円前後/kg) | 普通(4,000円〜6,000円前後/kg) | 高価(8,000円以上/kg) |
- 関連記事:3Dプリンター用レジンの基礎知識と種類比較
- 関連記事:水洗いレジンのメリットと特徴
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ABSライクレジンが向いている用途
ABSライクレジンの持つ「適度な硬さと粘り」は、以下のような用途で真価を発揮します。
- 可動フィギュアの関節・ガレージキットのハメ合い部分
- ネジ留めやタッピングビスを使用するパーツ
- 電子機器の筐体・ケースの試作品(スナップフィット機構)
ボールジョイントや軸を差し込む際、標準レジンでは軸が折れたり受け側が割れたりしますが、ABSライクであればしなりがあるためスムーズに嵌合(かんごう)できます。
標準レジンでネジを締め込むとネジ穴の周囲からピキッとヒビが入りますが、ABSライクはネジの圧力に対して粘り強く耐えることができます(過剰なトルクは避けてください)。
爪をパチッとはめ込むスナップフィット構造は、爪部分がしなる必要があるため、ABSライクレジンが最も活躍するテスト用途です。
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使用時の注意点とデメリット
ABSライクレジンは万能に見えますが、アクリル系光硬化樹脂ゆえの注意点がいくつかあります。
- 「本物のABS」と同じ強度は期待できない
- 限界値を超えると「突然破断する」
- 臭いがやや強い
本物のABS(FDM方式のフィラメントや製品プラパーツ)に比べると、引張強度や連続荷重に対する疲労耐性は劣ります。例えば、日常的に高い圧力がかかり続けるブラケットや、車のエンジンルームのような過酷な環境(100℃以上の耐熱や耐油)での実用部品には使用できません。
「高靭性(タフ)レジン」がグニャリと曲がって耐え続けるのに対し、ABSライクレジンはある一定の限界までは耐えますが、限界を超えると「パキン」と大きく割れます。
製品にもよりますが、標準レジンよりも特有の化学臭が強いものが多いです。作業時は必ず部屋を換気し、適切な保護用品を着用してください。
- 関連記事:光造形作業時の安全換気ガイド
- 肌への接触・食品への使用禁止
他のレジンと同様、液状時はアレルギー物質です。また、完全硬化した状態であっても、口に入れる食器類、ペット用のフードボウル、長期間直接肌に触れ続けるアクセサリー用途などへの使用は避けてください。
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適切な後処理手順とコツ
ABSライクレジンの性能を最大限引き出すためには、印刷後の処理が非常に重要です。
1. 洗浄(IPA等の使用)
- 未硬化レジンが残っていると表面がベタつくだけでなく、その部分から劣化して強度が落ちます。
- 洗浄はIPA(イソプロピルアルコール)または専用洗浄液を使い、ブラシ等で溝の奥まで優しくしっかりと洗い流します。
- 関連記事:洗浄硬化機(ウォッシュ&キュア)による効率的な後処理
2. サポート除去のタイミング
- 「二次硬化前」に取り除くのが鉄則です。
- 二次硬化を行うとABSライク特有の「硬さ」がさらに高まるため、サポートの根本が非常に硬くなり、剥がす際に本体の表面まで削り取ってしまいます。
- 印刷直後、または洗浄が終わってすぐの柔らかい状態で、ニッパー等を使って丁寧に切り落としてください。
3. 二次硬化(ポストキュア)
- 洗浄液の水分やアルコールをドライヤーなどで完全に乾燥させた後、UVライトで二次硬化を行います。
- 二次硬化が不十分だと、ABSライク本来の強度(弾性と硬さのバランス)が発揮されず、柔らかすぎたり強度が不足したりします。目安としては2〜5分程度(ライトのワット数や形状の厚みによる)が適正です。過剰に硬化させると今度は「脆さ」が増してしまいます。
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商品選定チェックリスト
ABSライクレジンを購入する際は、以下の項目をクリアしている製品を選ぶと失敗が少なくなります。
- [ ] 波長(405nm)の対応確認
- [ ] カラーバリエーションの選定
- [ ] 水洗い対応タイプの有無
- [ ] メーカーの推奨パラメータ(露光時間)の存在
多くのデスクトップ光造形機が採用する405nmの光源に対応していること。
塗装やサフ(サーフェイサー)を吹く前提なら「グレー」がディテールを確認しやすくおすすめですが、透明感を持たせたい場合は「クリア」を選びます。
最近は「水洗いABSライクレジン」も登場しています。アルコール(IPA)を扱いたくない、または洗浄時の臭いを減らしたい場合は、水洗いタイプを選択肢に入れましょう。
ABSライクレジンは標準レジンよりも少し長めの初期層露光時間が必要な場合があります。AnycubicやElegooなど、使用しているプリンターに適した設定データが公開されているメーカー品を選ぶと、スライス設定での失敗を避けられます。
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FAQ(よくある質問)
Q1. 水洗いABSライクレジンは、通常のABSライクと同じ強度ですか?
A1. ほぼ同等の強度を持つ製品が多いですが、やや湿気に弱い性質があります。 水洗いタイプは水で洗浄できるため後処理が楽ですが、印刷後に水分を吸収しやすく、乾燥が不十分なままだと経年劣化でひび割れ(クラック)しやすくなる傾向があります。洗浄後の完全な乾燥と、適切な二次硬化をより徹底してください。
Q2. ABSライクレジンで印刷したパーツをヤスリがけ(研磨)できますか?
A2. はい、可能です。むしろ標準レジンより削りやすいです。 標準レジンは硬すぎて削る際に欠けたり割れたりしやすいですが、ABSライクレジンは適度に粘りがあるため、デザインナイフでの削り込みや、耐水ペーパーでのヤスリがけがスムーズに行えます。
Q3. 二次硬化後に時間が経つと、また脆くなってくるのはなぜですか?
A3. 紫外線による経年劣化が原因です。 レジンは太陽光などに含まれる紫外線に当たり続けると、内部で架橋反応が進み続け、最終的には「過硬化(オーバーキュア)」状態になって脆くなります。完成したモデルの強度を長持ちさせたい場合は、UVカットクリアスプレー等のトップコートを吹き付けて保護することをお勧めします。
Q4. ガレージキットのフィギュアの髪の毛など、細い先端パーツに向いていますか?
A4. はい、非常に向いています。 細く鋭利なパーツは、標準レジンでは組み立て時やちょっと触れただけでポキポキ折れてしまいますが、ABSライクであれば多少のしなりによって衝撃をいなすことができるため、破損率を劇的に減らすことができます。
Q5. 印刷したパーツがなんだか柔らかすぎて曲がってしまうのですが、不良品ですか?
A5. 二次硬化の不足、または造形物の厚みが薄すぎることが原因です。 ABSライクは「しなり」があるため、厚みが1mm〜2mm以下の薄肉形状ではペラペラと曲がってしまいます。パーツの強度を高めたい場合は、CAD設計時に肉厚を3mm以上にするか、補強用のリブ(梁構造)を追加してください。また、二次硬化の時間を少し伸ばしてしっかり内部まで硬化させてください。
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