001 / EC利益率
EC利益率の目安と計算式。値引き前に粗利を確認する
ECの利益率は、売上の大きさではなく「販売後に手元へ残る粗利」を見るための指標です。商品を値下げする前、クーポンを出す前、広告費を増やす前に、販売価格・原価・手数料・送料を並べて確認しておくと、売れたのに利益が残らない状態を避けやすくなります。
この記事の要点
- EC利益率は、販売価格から原価・手数料・送料などを引いた粗利を基準に見ます。
- 売上が伸びても、粗利額が小さい商品はクーポン、送料無料、広告費、返品対応で赤字になりやすいです。
- 最初は「通常販売時の利益」を出し、そのあとに値引き・ポイント・広告費を1つずつ足して判断します。
- 利益率だけでなく、1注文あたりの粗利額を見ると、広告やセールに使える余力が分かります。
EC利益率とは何を見る数字か
EC利益率は、商品が売れたときに売上のうち何%が利益として残るかを見る数字です。ただし、ここでいう利益は「入金額そのもの」ではありません。販売価格から、仕入れ原価、モール手数料、決済手数料、送料負担、クーポン、ポイント、広告費などを引いたあとの金額を見ます。
小規模ECでは、店長や担当者が商品登録、広告、在庫、発送条件をまとめて見ていることが多いため、売上だけで判断すると危険です。月商が上がっていても、送料無料ラインやクーポン施策が重なっていると、手元に残る利益が薄くなります。
最初に見るべきなのは「売れそうか」ではなく「売れたあとに残るか」です。売上を作る施策は、通常販売時の粗利を確認してから重ねるほうが安全です。
まず使う基本式
最初は複雑な会計上の利益ではなく、商品ごとの粗利をざっくり確認します。
粗利額 = 販売価格 - 原価 - 販売価格 × 手数料率
利益率 = 粗利額 ÷ 販売価格 × 100
たとえば、販売価格4,980円、原価2,400円、モール手数料10%の商品なら、手数料は498円です。粗利額は4,980円 - 2,400円 - 498円 = 2,082円、利益率は約41.8%です。
この時点では利益が残っているように見えます。ただし、ここから送料無料で送料600円を負担し、10%ポイントを付け、広告費を1注文あたり700円使うと、粗利は一気に小さくなります。
| 項目 | 金額例 | 見方 |
|---|---|---|
| 販売価格 | 4,980円 | 購入者が支払う商品価格 |
| 原価 | 2,400円 | 仕入れ、製造、同梱物など |
| 手数料 | 498円 | 販売価格の10%として計算 |
| 通常粗利 | 2,082円 | 値引きや広告費を入れる前の余力 |
| 送料負担 | 600円 | 送料無料にする場合に差し引く |
| 広告費 | 700円 | 広告経由で売れた場合に差し引く |
利益率の目安は商品タイプで変わる
「EC利益率は何%あればよいか」は、商品単価、リピート率、送料、広告の使い方で変わります。すべての商品に同じ目安を当てるより、商品タイプ別に見るほうが実務的です。
- 低単価商品: 粗利額が小さいため、送料や広告費の影響が大きくなります。利益率だけでなく、1注文あたりの粗利額を必ず見ます。
- 高単価商品: 利益率が少し低くても粗利額が大きい場合があります。返品や問い合わせ対応のコストも見ます。
- リピート商品: 初回の広告費をどこまで許容するかが判断点です。初回利益だけでなく、2回目以降の利益も分けます。
- セール商品: 在庫処分が目的なら利益率は下がってもよい場合があります。ただし赤字ラインは先に決めます。
検索で「EC 利益率 目安」と調べると、平均値のような答えを探しがちですが、店舗運営では平均よりも「この商品に広告費をかけてよいか」「クーポン対象にしてよいか」の判断に使うほうが役立ちます。
値引き前のチェックリスト
- 通常販売時の粗利額と利益率を計算した。
- モール手数料や決済手数料を、販売価格に対して入れた。
- 送料無料にする場合の送料負担を引いた。
- クーポンやポイントを金額に直した。
- 広告経由で売れる商品は、1注文あたりの広告費を仮置きした。
- 返品、交換、破損、再発送が起きたときに赤字にならないか見た。
- 粗利額が小さい商品を、強い値引きの対象から外した。
クーポン、送料無料、ポイント、広告費は、それぞれ別の施策に見えますが、利益計算ではすべて粗利を削る要素です。同時に使う場合は必ず足し合わせて見ます。
よくある失敗
売上が増えたのに利益が残らない
一番多いのは、広告やクーポンで売上を増やしたものの、通常販売時の粗利が十分でなかったケースです。広告管理画面ではROASが良く見えても、商品側の粗利率が低いと、広告費を引いたあとにほとんど残りません。
送料無料とクーポンを別々に判断してしまう
送料無料だけなら利益が残る、クーポンだけなら利益が残る、という商品でも、同時に使うと赤字になることがあります。施策ごとの画面ではなく、注文単位で合算して見ます。
利益率だけを見て粗利額を見ない
利益率が30%でも、販売価格1,000円なら粗利は300円です。広告費100円、送料300円を足すとすぐに赤字です。低単価商品ほど、%より円で見る癖をつけると判断しやすくなります。
次に確認したい項目
通常販売時の利益率を確認したら、次は施策ごとの負担を足していきます。クーポン、広告費、送料無料、ポイント付与は、どれも売上を伸ばすための手段ですが、粗利を削る要素でもあります。
FAQ
EC利益率は何%あれば安心ですか?
一律の正解はありません。送料、広告費、返品率、リピート率で必要な利益率は変わります。まずは通常販売時の粗利額を出し、そこから施策に使える金額を確認するのがおすすめです。
粗利率と利益率は同じですか?
この記事では、販売価格から原価と手数料を引いた粗利を販売価格で割ったものを、実務上の利益率として扱っています。会計上の営業利益率とは範囲が違います。
広告費は利益率の計算に入れるべきですか?
通常販売時の利益率と、広告後の利益は分けて見るのが安全です。まず商品単体の粗利を確認し、そのあと広告費を引いて、広告をかけても利益が残るか判断します。
送料無料は原価に入れますか?
商品原価とは分けつつ、注文ごとの利益計算では必ず差し引きます。送料無料ラインを作る場合は、送料込みで粗利が残るかを別に確認してください。